宮崎駿 出発点①

物語を作ると、自分の下手さに嫌になる。そして自分が作家ではない、しょせん不可能なことを気まぐれに始めたのだと肯定して、作業を終える。しかし、この自分の思い通りにいかない経験は、優れた作家でもなるらしい。けれども、考え続けると、この形しかないと確信がゆくものが思い浮かぶらしい。自分は作家であると想定して、下手が目についていやになっても作家である以上作品を仕上げねばならないと覚悟を決めて、まずひとつ形を仕上げよう。

仕上げると、ここがどうも気に入らないという方向が出る。この気に入らなさこそが推進力となって作品は進む。とっかかりは、なにをあらわしたいのか。そういう意味では総力戦なのである。

自分の想像を絵に書き出す。目的にそって、何枚も。その中から使うものが現れる。使わないものも、自分のストックとなる。こういった作業を続けると、あのときのあの構想を今使う、バラバラのピースがひとつになるという経験を持つに至る。

完成させること。表現したいものをもつこと。目標があれば、足したり引いたりするものは見える。すべての経験が肥やしになる。